2015年6月14日日曜日

より酷いのかもしれない

1.
たとえば目の前にスカートをはいた女の子がいて、その女の子は量子的なパンツ(存在するか存在しないかの二つの状態がある)を履いているとする。その女の子がパンツを履いているかいないかというのは、観測者がスカートをめくるまで確定せず、観測者がめくるまではパンツが履いてある状態|e>と履かれていない状態|n>の重ね合わせになっている。
ここで、パンツには装着感がない、つまり、スカートの中にパンツが存在するか存在しないかということがその女の子にも分からないとする(量子パンツを履いたことだけは確実)。その女の子に「あなたのスカートの中にはパンツがありますか」と訊いてもその女の子は「めくるまで分からない」としか答えられない。
一方、女の子が古典的なパンツを履いていた場合、その女の子にパンツの有無を訊けば、その女の子が痴呆でない限り、その女の子はパンツの有無を知っている。履いたことor履いていないことを覚えている限り、そのパンツが履かれたあるいは履かれていない状態というのは変わらない。

2.
TCGのカードのパックをコンビニで一つ選んで買ったとする。あなたはセーブ&リセットをする能力がある。パックを開封する前にセーブをした。開封したパックには外ればかりだったのでリセットをした。もう一度開封すると、さっきと同じ外れカードたちが入っている。これを何度繰り返しても、同じ外れカードしか入っていない。なぜなら工場でカードをパックに詰めた時点で、あるパックに入っているカードの組は決まっているからだ。
ここで量子的なパックがあったとする。これを開封すると、その弾に含まれるカードのすべてのうちから5枚が所与の確率分布で現れる。これは工場で封入されたときの様子を知らないので(サーチなどで事前確率を更新しない限り)古典パックでも当然同じことがいえる。ところが、この量子パックをセーブ&リセットで何度も開封すると、毎回異なった組が現れうる。


合否だとか結果を見なくても客観的には結果が確定しているような状況で「シュレディンガーのうんたら」と言われるとブチ切れてしまうので、不正確でも多少はましな喩えを書きたかった。


2015年6月12日金曜日

『流通大変動 現場から見えてくる日本経済』

読み始め6/11 読み終わり6/11
面白かった。自分のような経済どころか社会に疎い人間向きの本ではあった。

メモ
全体
・成熟した市場では特定の消費者を深掘りしていく「農耕型」のマーケティングが有効。
・POSは40代男性のような情報だけだから不十分→会員カード→ビッグデータ(笑)

ユニクロの強み
・SPA(製造小売):ユニクロが確立したビジネスモデル。「小売業でありながら、製品の開発から生産から物流までのトータルの仕組みを、小売業が主導権をもって決定する」
・チャネルリーダーのポジションを確保した
・少品種多量販売:アジアの低コスト生産を活かせる←大量のロットがあるほうが効率がよい
・東レとの提携:先端繊維を大量に購入→差別化、互恵的
・ブランドイメージ:ザギンに店を構える

問屋(中間流通)
・3つの機能:ロジスティクス機能、商流機能、決済機能
・〆張鶴などは信頼できる酒屋や飲み屋に直接卸す→利益率がべらぼうに高い(原文ママ)
・現状きつい←競争相手との差別化が難しい
・小売(下流)やメーカー(上流)がその機能を兼ねていくスタイルへ:ASKULなど
・拡大を続ける市場では儲かる(マスマーケティング)

百貨店の今後
・強いブランドイメージの利用や都市回帰などで復権しうる?
・やっぱり二子玉がアツい


都市-郊外論がちょっと雑っぽい。流通に絡んだ話ではあるけど流通そのもの自体への言及は少ない印象。上のメモにはないけどコンビニ、百貨店、郊外のイオンモールなどの話も多い。(百貨店は馴染みが薄いしイオンモールなどの話はまあ思ってたしね)
大店法などの消費者の便利を考えない規制はファック。まえがきにある、静岡県ではコンビニの出店に反対運動が起きていかがわしい店だとか言われた話は笑った。




2015年6月11日木曜日

『現代の金融入門』

読み始め6/5 読み終え6/10

銀行の役割から伝統的な銀行業や最近の金融商品(何とかデリバティブとか)などまで手広く書いてある。
説明が込み入ってくると大抵分かりやすいイメージ図が出てくるので良心的。

正直なところ頭にこういう分野の大略を描いた地図がないので色々書いてあるなーくらいの認識に留まってしまう。単語や話題としてはマンキューマクロ経済学の読書会したときに読んだところだなーとか、はいはいあの話ね、となったりはするのだけど、どうしても虫瞰的になってしまう。もう少しこの手のを色々読んだあとに帰ってくると幸せになれそう。

2015年6月10日水曜日

『ベイズ統計と統計物理』

読み始め6/9 読み終え6/9

・あぶすと
まえがきにもある通り、「統計物理と統計的な情報処理が似ている」ということが書いてある。似ているというのはベイズの公式P(x|y)=P(x,y)/\sum_x P(x,y)とカノニカル分布の式が似ているということ。条件付き確率を使った問題と統計物理の問題の共通点として、小数の要素間に制約があること(隣り合うノードやセルの数に制約がある、とか)があって、数理として似通っている。じゃあ統計物理の手法を、確率的推論の問題に持ち込もう、ということで、動的モンテカルロ法を持ち込むといいことがあるよ、というのがこの本の大略。

・雑感
ベイズ統計は、今のところ統計学の本で(ベイズ統計とは関係なしに)ベイズの公式が出てきて、これがベイズ統計では重要なんですよ〜と一言添えてあるのを読んだくらい。くわえて統計力学にしても、(広い意味での)イジング模型で遊んだこともなければ動的モンテカルロ法も統計力学の本にちょっと書いてあったところをほぼスルーしたくらいなので、何より勉強しないとなあ、と思った。

・?
確率の対数を取ってマイナスを掛けてエネルギーを掛けるのって数式上の対応付け以外に何かしら物理的意味を見いだせるのかしらん。対数とるのはエントロピーっぽいけど。
温度も対応づけのためにT=1と置いてたけど何らかのパラメータとして使えそうな感じがする。

2015年6月9日火曜日

最近の話

3月まで続けていた月一ごとの云々を書く記事は(案の定)頓挫しましたね。
やっぱり記録を残すなら即日性を持たせたほうがいいっぽい。evernoteに断片的に色々書いてあることは書いてあるんだけども。

春になって日常的に電車移動をするようになって本を読むしかない時間というのが出来たので、俗っぽい本も含めて幅広く雑多に読もう、と思ったり。それと読書メーターの感想欄には書けないような感想(単に長いとか個人的すぎるとか他の書籍との比較が多いとかで)をとにかく逐一書くように心がけたい。


・最近の悩み
一過性のものか量りかねてるのだけど、それなら書くと忘れるので。
B4→M1にあたって研究室と合わせて方向性をがらっと変えたい気がしてきたんですよね。いまの研究室に不満はまああるといえばあるけど、決して居心地が悪いわけではないし、今の研究室の問題というよりかはぼく個人の興味とキャリアの問題。
キャリアでいうと、現状メーカー就職というのは考えてなくて、所謂文系就職というか金融とかITとかのほうに気持ちが大分寄っていて、そうすると別に今いるところの直属の専攻、広く言えば実験系の研究室でなくてもいいんだよなあ、と思ったこと。
興味でいうと、「もし頭がよかったらやりたかった分野」というのがもともとあって、どのみち能力も金もないしアカデミアには残れないのだから物味遊山的にでもそういう分野に手を出したほうが楽しいんじゃないかなあ、と思い始めたこと。統計学とかプログラミングとかを勉強してるのは楽しいし、物理の知識とかも活かせるらしいから、前提知識の問題は大してクリティカルでもないらしい(?)
……とかうまくまとめられないまま書いてるうちに気持ちが固まってきたような。


2015年4月2日木曜日

2015年3月雑感

3月の小説と映画は後日。

10日ころから例によって2週間程度実家に帰省していた。今までは1ヶ月以上がザラだったので2週間は少ないほう。とはいえこれからはもっと短い期間の帰省になると思う。
実家で何をしていたかというとこれも例によって映画を観たり本を読んだり寝たりゲームをしたり料理を作ったり運転したり酒を飲んだりと要はだらだらしていた。

ゲームと言えばACfAを久々にやった。操作を丸っと忘れていたので取り戻すのに時間がかかった(元もあまり上手くなかったけれど)。アセン楽しい。 ゆとりなので如何せんVとか以前のシリーズとかよりヒロイックな方が好き。


料理(というほど大したものでなくても)は家族や自分以外の人の分も作ると楽しかったしレパートリーを増やしたい。

心境的な変化として、格好をせめて年相応に気遣おうと思った。ブランドのレベルを上げるとか、服をちゃんと干してアイロンをかけようとか。やったこととしては着ない/着られない服の一掃、服(とあとリュック)を買う、アイロンがけを教わったり。これからやることは、改善した服の扱いを続けること、シャツを適宜買い換えていくこと、靴もどうにかすること。

2015年3月3日火曜日

『あなたのための物語』感想

読み終えたときには目が赤く腫れていた。
当然成功してるわけでもなし能力も全く足らないから、サマンサに投影する資格はないのだけれど、似たような恨みを抱えつづけている人間には響き過ぎる。

"そういうことが(テクノロジーによって)可能だとして"の話なのだから、"感情"だとかの扱いに不満をたれるのはナンセンスだと思う。それなら量子コンピュータなのでこれこれこんなことができるのほうにも突っ込めよと。

感想にも満たない印象が個人的すぎたのと、他の人の感想に汚される感じがしたので何とかメーターのほうに書く気にならなかった。というのを感想ということに当面しておく。落ち着いたらそのうち読み返したい。

3/3

服とか鞄とか美容とか日用品とかにほとんどお金を使わず、自分の精神の安寧につながる出費しかしていないという点で、現状が最高に切り詰めた生活なんじゃないか。
……とか言ったら方方にブチ殺される気がしたのでここに書いておきます。

2015年3月2日月曜日

ドライブ旅行

ツイのオタクたちと2/25〜2/27にかけてレンタカーを借りて旅行した。初日に東京〜平等院〜関西空港〜天橋立と移動。二日目の朝に天橋立を観て、そのあとは京都市街に車を置いて夜は飲んだりした。三日目は豊郷へ行き、長野経由で帰った。

2015年3月1日日曜日

2月に読んだ本/観た映画まとめ

読んだ本が少ないので映画とまとめて書く。

・『量子力学1』 小出昭一郎
言うほど分かりやすくない気はする。
・『二十二分間の予言』 笹帽子
おれも肉骨茶食べたい。
・『BEATLESS』 長谷敏司
やはりボーイミーツガールは最高だし、幼馴染の親友と云々も最高だし、そして何よりお金は最高。
・『My Humanity』 長谷敏司
濃い。allo,toi,toiや父たちの時間はやばい。

途中の本
・『量子力学基礎』松居哲生
先生のおすすめということで買った。項が2つのときに、具体的な行列やベクトルや式を書いたあとにΣ記号やブラケットで書いていて、n個の和や無限個の和の話でも記号では躓かなくなるだろうなと思った。
この手の本で経路積分を取り上げているのと全ページのうち半分近くが付録なのがちょっと面白い。
・『量子論の基礎』清水明
昔はちんぷんかんぷんだったけれど今は綺麗だし(高度でない部分は)分かりやすいと思う。
・『量子力学2』小出昭一郎
一気に難しい。数表示(と第二量子化)と光の量子論と光子との相互作用は最低限理解したい。
・『SFマガジン700【海外篇】』 (ハヤカワ文庫SF)
着実に読み進めてはいる。如何せんアンソロジー形式はいまいち乗れないので読むのに時間がかかる。
・『固体物理学 上』G. グロッソ、 G.P. パラビチニ
・『固体物理学 中』G. グロッソ、 G.P. パラビチニ
前よりは部分的には着実に読めるようになっているしこの3月で読みきりたい。

映画
・「ウルトラヴァイオレット」
子役の子が可愛かったらもう少し評価を上げてもよかった。ダクサスに似て憎たらしい顔を意識したにしても。
・「エクソダス 神と王」
予告で見たイミテーションゲームが観たいと思った。とりわけ悪いというほどではない。
・「沈黙の戦艦」
セガールの表情は癖になりそう。
・「インソムニア」
メメントやインセプションやインターステラーに比べると揺さぶられはしなかった。けどまあ面白い。
・「バットマンビギンズ」
「なんだこれ……最高じゃねえか……」

雑感
案の定、宣言するとその通りにやらなくなるらしい。色々他にやることがあるときにも結局それらにコミットしきれずに不毛に時間を浪費してしまうので、そういうときにこそ本を読んでいきたいと思った。



『BEATLESS』感想

2月に読んだ本まとめに一言書くつもりが思いの外長くなったので別ページにした。

ずいぶん積んであったのをようやく読んだ。某人の言及の仕方から割と堅いSFなのだと思っていたけれど、主要人物の年齢とそれに合わせた文体という意味でラノベっぽい。ヘヴィだけど(物理的に)。レイシア級にカギ括弧付きで口上をそれぞれ喋らせたシーンは正直、何やこれ…と思ったけど今は素直にサイコーだと思える。主要人物とレイシア級が(おおむね)(結果的に)1対1の対応をもつこと、非力な人間の命令で強力な道具であるレイシア級が動くことからローゼンメイデンとかFateとからしいとも思う。

思想が対照的なアラト、リョウ、ケンゴ、(エリカ・バロウズ)とそれぞれに対応するレイシア級を軸に話が進んでいくのが綺麗。
主にリョウのhIEへの嫌悪というか何だろう、道具であることを過剰に(?)意識していることが正直理解しきれてなくて、便利なら何でもいいし、アナログハックだろうと何だろうと人間らしさを感じることの何がいけないんだ……?と思いはした。あえて作中の人物のスタンスでいうとユカやアラトに近くて、これは自分が便利さとオタクコンテンツを享受するだけの消費者だからだろうとは思う。

とはいえ、完全に変わりきってしまった世界ではなく変わりゆく世界の話だし、変化に直面した人間のほうが保守的になるのはちょっとリアルだと思う。(保守的というのは単語の選択がちょっとよくない感じがする。hIEが人間の形をしているから過剰に反応している部分が大きいわけだし)
だからある意味われわれと同じ前世紀の人間であるエリカ・バロウズが徹底して開き直れているのかもしれない。自分の場合は単に想像力が欠如しているだけにしても。

一晩で一気に読み終えてしまうくらいには面白かった。

2015年2月19日木曜日

2月19日

・グロッソ以下略
8章の途中くらいまで一応読み進めた。5章はLCAO法やOPW法くらいまでは分かりやすいけど、その後はいまいち掴めてすらいない。OPW法の困難をいかに取り除くかみたいな話っぽい気はした。7章8章は前に眺めたときは全くわからなかったが、今回は何を言っているかくらいはわかった。固定格子近似のもとで(パラメーターである核位置を動かして)得られた断熱面を決めて、核位置を動くようにしたときもその断熱面を核が動くと仮定するのが断熱近似らしいとか。三次元も一次元での結果を形式的にはそのまま拡張するだけとか。

・SF?
久々に旧友と会って楽園追放の話をしたときに「楽園追放は深い」「虚淵はガルガンティアやサイコパスも何だけど「人」を描いてるんですよね「人」を」だとか言われてしんどくなって早々に切り上げてしまった。
(主に)テクノロジーによって人間や社会がどのように変化するかというのは、SFにおける非常にオーソドックスなテーマであって、虚淵氏の特異性ではないでしょう。楽園追放に関して言うと仮想世界、管理社会、人工知能、外宇宙、荒廃した世界等もろもろのよくある(そして魅力的な)設定をこれでもかとばかりにごった煮にガジェット的に盛り込んでるのがあまり好きじゃないので何だかなーという感じ。まあ面白いのだけどそれなら戦闘シーンとかアンジェラ・バルザックちゃんのケツとかに着目したい。

あと、長らく積んでいたBEATLESSを読み始めた。まだ100pくらいのところ。今のところローゼンメイデンっぽいという印象。





2015年2月16日月曜日

2月16日

2月16日といえば〜の日ですね、という具合の書き出しにしたかったのだけど、Wikipediaの項目を見たらフィクションのできごとの欄に目ぼしいことがなかったので諦めた。

一日のうちに何もしていない時間(本当に文字通り気がついたら1〜2時間経過している)が多すぎるので、一日の記録をつけようと思い立ったので書こうと思う。定期的に試みては三日坊主にさえなれずに終わっているのでは?という声は気のせい。

グロッソ・パラビチニ固体物理学をいい加減ちゃんと読むぞと決意した。4章の1電子近似と近似を越えての真ん中くらいにいる。ハートリーフォック方程式までのくだりはザボのおかげで形式的には難なく読めた。前の章で扱ったゾンマーフェルト模型はこれだけ簡単なのに単純金属を定性的に説明できてすごいとかいう論調だったのに対し、交換相関を取り入れてパワーアップしたはずのジェリウム模型の節は現実の系はこうはならないという但し書きが多くて笑った。まあ悪いのは模型じゃなくてハートリー・フォックの取り扱いだし、それでも偏極相とかウィグナー結晶とかが一応出てくることには出てくるし、そもそも前者と後者では議論しているレイヤーが違うのだけど。何というか論調に目を向けすぎる俗な読み方はよくないなと思う。

量子力学II(小出)は早くも断念しそう。10章の原子と角運動量の内容は、どちらかと言えば化学よりの人間だったら結果だけは知っていることだし、とくに抽象的でもないのだけど、なんでか難しい。目的からすれば11章と13章さえ読めればいいわけだから頑張りたい……。

艦これ、イベント期間中は再開しようと思う。あわよくば磯風。あわよくば初風。久しぶりに触ると、どの遠征でどういう編成にしなければならないかというのを全く覚えていなくて面倒だ。装備の切り替えも編成を変えるのも面倒だ。

(たしか14日だったと思うのだけど)ウルトラヴァイオレットを観た。金のかかったリベリオンとしか聞いていなかったからか、たしかに役者が多い!背景が豪華だ!金かかってそう!といった具合の見方しかしていなかった。終盤の戦闘はガン=カタらしかったし王道設定をガバガバにした感じなんかはたしかにリベリオンっぽいと思った。

2015年2月13日金曜日

『量子力学(I)』小出昭一郎 感想

ちゃんとした(?)量子"力"学の本をちゃんと読むのは初めてだったかもしれない。

1章はよくあるあれ。シュレディンガーの顔写真が若くてイケメン。
3章の演算子の固有関数や固有値だとかは最初から行列と対応させて読むほうが分かりやすい気がする。
4章の特殊関数は天下りに解として紹介される。球面調和関数は6〜8章全部に出てくるんだよな。とはいえ量子数lとmが何、Y^m_lがl^2とl_zの同時固有関数、昇降演算子でどうなるかくらいだけ分かっていれば困らないかしら。三次元調和振動子を極座標で書くのは面白いと思った。
5章、散乱はほぼパス。トンネリングは2章とかでもよかったような。
6章が行列をいちいち具体的に書いてくれているのでわかりやすい。そういえばこの本だとヒルベルト空間は無限次元のものに限って言っているんだな。
7章、エネルギーの二次の摂動の導出はそういえば初めて見た。水素原子の分極の基底状態、励起状態による違いは面白い。時間に依存する摂動法はII巻。変分原理のところは未定係数法を使ってくれないほうがわかりにくい。
8章、スピンを軌道角運動量の類推から導入しているのは、完全な天下りよりはわかりやすいような気にさせられるがちょっと不安になる。

量子論の基礎で批判しているような具合に進むごとに概念の修正を求められる、というわけではないけれど、継ぎ足し的に概念が導入されるのはちょっと読みにくいと思った。

2015年1月29日木曜日

1月中に読んだ本まとめ

・『大人のための読書の全技術』斉藤孝
本を読む上での真っ当な技術の概要が書いてある。少なくとも本を読むぞ!という気にさせられる点で類書よりよい。

・『百器徒然袋 雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑 (怪COMIC)』志水アキ
これ原作読んだっけか……?志水さんのコミカライズは安心して読める。

・『高校数学でわかる流体力学 (ブルーバックス)』竹内淳
初流体力学。余裕があればそのうち専門書も読みたい。

・『肉体コミュニケーション (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)』mogg
最近の描き方のほうが好きなので表題作はあまり。新しめの作品は本当によい。

・『ちまカノ (メガストアコミックス)』アズマサワヨシ
モザイク。荒削りながらもよいというのはたぶんこういうことを言う。

・『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選 (ハヤカワ文庫JA)』
ニューロマンサーを断念したぼくでもクローム襲撃なら読めるんだなという実感を得たのが最大の収穫かもしれない。ギミックは具体的に描くと陳腐化しやすいんだろうなと思ったりした。

・『統計熱力学 -ミクロからマクロへの化学と物理-』原田義也
化学徒向き。

・『寺田寅彦 わが師の追想 (講談社学術文庫)』中谷宇吉郎
ぼくも貴族趣味を持つようしたい。いろいろやってみたくなるので一番上と並んで年始向き。随筆以外から寺田寅彦の人となりが知れるのはありがたいし単に読み物として面白い。

・『日本酒 (岩波新書)』秋山裕一
日本酒に関して雑多に色々書いてあってよい。

・『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』ポールグレアム
オーム社書籍15%フェアなるものをやっていたので。前半〜中盤のナードの話を首肯する資格がぼくにあるのかと思いはするが、少しくらいは許してほしい。

・『「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた! (ブルーバックス)』古澤明
さすがにそれを猫と呼称するのは苦しい。前作2冊もおいおい。

・『草枕 (新潮文庫)』夏目漱石
2015年最声に出して読みたい一冊。非人情。

・『ぼくらは都市を愛していた (朝日文庫)』神林長平
途中本当にマ○○○○スかと思ったけど結局のところそれほどそうでもない。わたし、感覚、認識、世界の捉え方ですば日々を連想した。

・『振動・波動』 小形正男
分かりやすくてよくまとまっている。読書メーターに並んでいる感想とほぼ一緒の感想。

漫画を除くと11冊/月か。本来量だとかペースだとか気にすべきではないとは思いつつ、このラインは維持したいところ。
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読み進めてる途中か途中から手を付けてないもの。1月中に読み終え(てこれを更新す)るかもしれないし途中でやめるかもしれない。

・『よくわかる電磁気学』前野昌弘
くどいくらいに丁寧に書いてある。ベクトル解析のイメージがわかりやすい。

・『熱物理学』チャーレス・キッテル, ハーバート・クレーマー, 山下 次郎 (訳)
熱力学・統計力学・移動論がごっちゃに書いてある(とくに前2つ)のは良さでもあり悪さでもあり(三者に関連はあるけれど統一されていたり包含関係にあるわけではないことは認識していたほうがいい)。読んでて楽しい本。キッテルの有名な方に比べると訳がいい。

・『異邦人』カミュ
はい
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2月〜3月に読みたい本というかジャンルというか。あまり先のことは明言しないほうがいいと思いはするがまあ多少はいいでしょう。
・漱石
「猫」あたりはとくに冒頭しか知らないしいい機会かもしれない

・某試験に向けた物理学の本
一応は復習になるはず。ある意味真っ当な物理教育を受けてないので学ばにゃならぬことが多い。

・量子力学、固体物理、レーザー、(よくを言えば量子光学?)
諸事情ということでひとつ。モチベーション自体は一番高い。

・『順列都市』再読
(おぼろげになりつつある記憶によると)イーガンで一番好きな作品なので、じっくり読み返してみたい。

・SF関連
具体的にはディファレンス・エンジンとそれを踏まえての屍者の帝国の読み返し。あとはとりあえず海外SFの短篇集。ニューロマンサーがしんどくてもクローム襲撃くらいの長さなら読めたので、誰の長編なら読めそうかの試金石にしようとかいう邪な考えもあり。

あとは適宜積読崩しと思いもよらない本を手に取れるといいな。

2015年1月11日日曜日

『統計熱力学』原田義也 感想

評判のよい化学熱力学や量子化学の本で有名な原田さんの統計力学の本。
ミクロカノニカル分布の説明を丁寧にしたあと、カノニカル分布とグランドカノニカル分布を全系をミクロカノニカル集団とみなすのと、それぞれの集団を考えるのとの二通りの仕方で導出している。集団を考えて導出したあと、未定係数のβやγがそれぞれ1/kT、-μ/kTに等しいこともきちんと導出してあり親切。
また、それらの分布の関係や、それらが同じ結果を与えることを理想気体を例に分かりやすく説明されている。

理想気体の章では、常温常圧で安定でないような単原子分子(C,Oなど)は励起状態の寄与も考えなければならないとか、多原子分子の具体的な分配関数の求め方なども載っている。多原子分子は基準振動だけでなく内部回転など考慮しなければならないことが多い。それにしても熱力学の値をうまいこと再現できるものだなあと思った。
平衡定数を統計力学表示にすることがいまいちどのようなご利益があるのかわからなかった。非理想気体や液体の章は難しかった。
この辺りの化学らしい話題の取り上げかたが面白いと思った。


2015年1月5日月曜日

『高校数学でわかる流体力学』感想

流体力学とは、非平衡熱力学の本を立ち読みしたときにチラッと名前が出てきたりとか、移動論での何かの式の根拠にちょっと名前が出てきたとか、そういう程度のお付き合いしかなかった。上の分野も専門とはずれるから、流体力学は名前だけ聞いたことのある親戚の親戚くらいの距離感だった。
講義あるいは聞きかじりでも、全く内容を聞いたことのない分野の理工書は読んだことがないなーと思い、そういう本を読むための練習がてら年末年始の暇つぶしに買って読んだ。

この本の目標は、1.飛行機が流体力学の効果とくにベルヌーイの定理によって飛ぶことを納得すること、2.できれば1のために二次元翼理論まで辿り着くこと、3.ナビエ・ストークスの定理まで辿り着くこと、かな。
全体的には、最後の章以外は非圧縮性で粘性のない場合について。基本的には一次元ないし二次元の場合の式に関しては導出することが多く、式展開も丁寧に書いてある。シリーズ恒例の人物紹介は初顔が多いせいか多分使い回ししてない(?)
あらすじは、
一章はベルヌーイの定理を定性的に説明。気体分子運動論を援用して流体に関してのイメージ作り。
二章は重要な3つの式を提示する。連続の式(質量保存則の流体力学版)、オイラーの方程式(運動方程式の流体力学版)、ストークスの定理の3つ。
三章でオイラーの方程式からベルヌーイの定理(圧力のエネルギーを含んだエネルギー保存則)を導く。ベルヌーイの定理の応用例としてベンチュリ管、トリチェリの定理、ピトー管を挙げている。
四章では速度ポテンシャルと流れ関数を導入。
五章では実部に速度ポテンシャル、虚部に流れ関数をもった複素速度ポテンシャルの話。一様な流れ、湧き出しと吸い込み、二重湧き出し、円形の循環の複素速度ポテンシャルを提示してそれがどういう流線を作るかという話。
六章は円のまわりの複素速度ポテンシャルの話。それが五章での一様な流れと二重湧き出しおよび円形の循環との組み合わせで作ることができて、すると円に働く揚力と抗力が導けるよ、という。ここでクッタ・ジューコフスキーの定理(揚力が流体の密度、一様な流れの定数、循環の積で与えられる)が登場。
七章ではブラジウスの第一第二公式を導出し、再びクッタ・ジューコフスキーの定理を導いている。
八章が二次元翼理論の話で、ジューコフスキー変換により、円を翼の形に変換できるので六章の結果を利用できるという話。
九章はナビエ・ストークス方程式の提示。粘性の話と、粘性力をオイラーの方程式の外力として取り入れることで導いている。最後に層流と乱流の話に触れて終わり。
1→2→3→4→5→6(→7)→8
    3→9
のような構成かしら。

このシリーズ全般に言えるような気がするけど、記述が分かりやすいのでなく、一次元の場合とか、特別簡単な例に関して丁寧に式を導出するだけ(あるいはしたあとにより一般的な式を置くこと)で何となく納得させているような気もする。でも導入にはやはり丁度よさそう。

数学は、複素数での微分が形式的には実数と変わらないとか、複素関数の正則性を除けば(説明はある)、たしかにまあ高校数学の範囲かなあ、という感じ。

ちゃんとした流体力学の本を読むとなるとベクトル解析も複素関数論も抜けきってるし、しんどそうなどと思ったりした。