2015年1月29日木曜日

1月中に読んだ本まとめ

・『大人のための読書の全技術』斉藤孝
本を読む上での真っ当な技術の概要が書いてある。少なくとも本を読むぞ!という気にさせられる点で類書よりよい。

・『百器徒然袋 雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑 (怪COMIC)』志水アキ
これ原作読んだっけか……?志水さんのコミカライズは安心して読める。

・『高校数学でわかる流体力学 (ブルーバックス)』竹内淳
初流体力学。余裕があればそのうち専門書も読みたい。

・『肉体コミュニケーション (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)』mogg
最近の描き方のほうが好きなので表題作はあまり。新しめの作品は本当によい。

・『ちまカノ (メガストアコミックス)』アズマサワヨシ
モザイク。荒削りながらもよいというのはたぶんこういうことを言う。

・『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選 (ハヤカワ文庫JA)』
ニューロマンサーを断念したぼくでもクローム襲撃なら読めるんだなという実感を得たのが最大の収穫かもしれない。ギミックは具体的に描くと陳腐化しやすいんだろうなと思ったりした。

・『統計熱力学 -ミクロからマクロへの化学と物理-』原田義也
化学徒向き。

・『寺田寅彦 わが師の追想 (講談社学術文庫)』中谷宇吉郎
ぼくも貴族趣味を持つようしたい。いろいろやってみたくなるので一番上と並んで年始向き。随筆以外から寺田寅彦の人となりが知れるのはありがたいし単に読み物として面白い。

・『日本酒 (岩波新書)』秋山裕一
日本酒に関して雑多に色々書いてあってよい。

・『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』ポールグレアム
オーム社書籍15%フェアなるものをやっていたので。前半〜中盤のナードの話を首肯する資格がぼくにあるのかと思いはするが、少しくらいは許してほしい。

・『「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた! (ブルーバックス)』古澤明
さすがにそれを猫と呼称するのは苦しい。前作2冊もおいおい。

・『草枕 (新潮文庫)』夏目漱石
2015年最声に出して読みたい一冊。非人情。

・『ぼくらは都市を愛していた (朝日文庫)』神林長平
途中本当にマ○○○○スかと思ったけど結局のところそれほどそうでもない。わたし、感覚、認識、世界の捉え方ですば日々を連想した。

・『振動・波動』 小形正男
分かりやすくてよくまとまっている。読書メーターに並んでいる感想とほぼ一緒の感想。

漫画を除くと11冊/月か。本来量だとかペースだとか気にすべきではないとは思いつつ、このラインは維持したいところ。
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読み進めてる途中か途中から手を付けてないもの。1月中に読み終え(てこれを更新す)るかもしれないし途中でやめるかもしれない。

・『よくわかる電磁気学』前野昌弘
くどいくらいに丁寧に書いてある。ベクトル解析のイメージがわかりやすい。

・『熱物理学』チャーレス・キッテル, ハーバート・クレーマー, 山下 次郎 (訳)
熱力学・統計力学・移動論がごっちゃに書いてある(とくに前2つ)のは良さでもあり悪さでもあり(三者に関連はあるけれど統一されていたり包含関係にあるわけではないことは認識していたほうがいい)。読んでて楽しい本。キッテルの有名な方に比べると訳がいい。

・『異邦人』カミュ
はい
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2月〜3月に読みたい本というかジャンルというか。あまり先のことは明言しないほうがいいと思いはするがまあ多少はいいでしょう。
・漱石
「猫」あたりはとくに冒頭しか知らないしいい機会かもしれない

・某試験に向けた物理学の本
一応は復習になるはず。ある意味真っ当な物理教育を受けてないので学ばにゃならぬことが多い。

・量子力学、固体物理、レーザー、(よくを言えば量子光学?)
諸事情ということでひとつ。モチベーション自体は一番高い。

・『順列都市』再読
(おぼろげになりつつある記憶によると)イーガンで一番好きな作品なので、じっくり読み返してみたい。

・SF関連
具体的にはディファレンス・エンジンとそれを踏まえての屍者の帝国の読み返し。あとはとりあえず海外SFの短篇集。ニューロマンサーがしんどくてもクローム襲撃くらいの長さなら読めたので、誰の長編なら読めそうかの試金石にしようとかいう邪な考えもあり。

あとは適宜積読崩しと思いもよらない本を手に取れるといいな。

2015年1月11日日曜日

『統計熱力学』原田義也 感想

評判のよい化学熱力学や量子化学の本で有名な原田さんの統計力学の本。
ミクロカノニカル分布の説明を丁寧にしたあと、カノニカル分布とグランドカノニカル分布を全系をミクロカノニカル集団とみなすのと、それぞれの集団を考えるのとの二通りの仕方で導出している。集団を考えて導出したあと、未定係数のβやγがそれぞれ1/kT、-μ/kTに等しいこともきちんと導出してあり親切。
また、それらの分布の関係や、それらが同じ結果を与えることを理想気体を例に分かりやすく説明されている。

理想気体の章では、常温常圧で安定でないような単原子分子(C,Oなど)は励起状態の寄与も考えなければならないとか、多原子分子の具体的な分配関数の求め方なども載っている。多原子分子は基準振動だけでなく内部回転など考慮しなければならないことが多い。それにしても熱力学の値をうまいこと再現できるものだなあと思った。
平衡定数を統計力学表示にすることがいまいちどのようなご利益があるのかわからなかった。非理想気体や液体の章は難しかった。
この辺りの化学らしい話題の取り上げかたが面白いと思った。


2015年1月5日月曜日

『高校数学でわかる流体力学』感想

流体力学とは、非平衡熱力学の本を立ち読みしたときにチラッと名前が出てきたりとか、移動論での何かの式の根拠にちょっと名前が出てきたとか、そういう程度のお付き合いしかなかった。上の分野も専門とはずれるから、流体力学は名前だけ聞いたことのある親戚の親戚くらいの距離感だった。
講義あるいは聞きかじりでも、全く内容を聞いたことのない分野の理工書は読んだことがないなーと思い、そういう本を読むための練習がてら年末年始の暇つぶしに買って読んだ。

この本の目標は、1.飛行機が流体力学の効果とくにベルヌーイの定理によって飛ぶことを納得すること、2.できれば1のために二次元翼理論まで辿り着くこと、3.ナビエ・ストークスの定理まで辿り着くこと、かな。
全体的には、最後の章以外は非圧縮性で粘性のない場合について。基本的には一次元ないし二次元の場合の式に関しては導出することが多く、式展開も丁寧に書いてある。シリーズ恒例の人物紹介は初顔が多いせいか多分使い回ししてない(?)
あらすじは、
一章はベルヌーイの定理を定性的に説明。気体分子運動論を援用して流体に関してのイメージ作り。
二章は重要な3つの式を提示する。連続の式(質量保存則の流体力学版)、オイラーの方程式(運動方程式の流体力学版)、ストークスの定理の3つ。
三章でオイラーの方程式からベルヌーイの定理(圧力のエネルギーを含んだエネルギー保存則)を導く。ベルヌーイの定理の応用例としてベンチュリ管、トリチェリの定理、ピトー管を挙げている。
四章では速度ポテンシャルと流れ関数を導入。
五章では実部に速度ポテンシャル、虚部に流れ関数をもった複素速度ポテンシャルの話。一様な流れ、湧き出しと吸い込み、二重湧き出し、円形の循環の複素速度ポテンシャルを提示してそれがどういう流線を作るかという話。
六章は円のまわりの複素速度ポテンシャルの話。それが五章での一様な流れと二重湧き出しおよび円形の循環との組み合わせで作ることができて、すると円に働く揚力と抗力が導けるよ、という。ここでクッタ・ジューコフスキーの定理(揚力が流体の密度、一様な流れの定数、循環の積で与えられる)が登場。
七章ではブラジウスの第一第二公式を導出し、再びクッタ・ジューコフスキーの定理を導いている。
八章が二次元翼理論の話で、ジューコフスキー変換により、円を翼の形に変換できるので六章の結果を利用できるという話。
九章はナビエ・ストークス方程式の提示。粘性の話と、粘性力をオイラーの方程式の外力として取り入れることで導いている。最後に層流と乱流の話に触れて終わり。
1→2→3→4→5→6(→7)→8
    3→9
のような構成かしら。

このシリーズ全般に言えるような気がするけど、記述が分かりやすいのでなく、一次元の場合とか、特別簡単な例に関して丁寧に式を導出するだけ(あるいはしたあとにより一般的な式を置くこと)で何となく納得させているような気もする。でも導入にはやはり丁度よさそう。

数学は、複素数での微分が形式的には実数と変わらないとか、複素関数の正則性を除けば(説明はある)、たしかにまあ高校数学の範囲かなあ、という感じ。

ちゃんとした流体力学の本を読むとなるとベクトル解析も複素関数論も抜けきってるし、しんどそうなどと思ったりした。